イスラムと中東Twitter革命

 

6月13日、同志社大学にて
シリア ダマスカス大学
ダマスカス大学イスラーム法学部イスラーム比較法学科長
(比較法学:学派同士が認め合うための比較研究)
である ワフバト・ズヘイリー博士 の講演が開催されました。

同志社大学は、ユダヤ、キリスト、イスラームの
3大一神教を研究する神学部を有しており
一神教の学際的研究が文科省の
21世紀COEプログラムに採択されています。

結構な頻度でこの分野に関わる世界的な講師を招いて
講演会を開催しているようです。

【概要】 『イスラームと中東ツイッター革命』
チュニジアの革命を皮切りに、
中東で革命運動が相次ぐ現在の情勢について
お話を聞くことが出来ました。

知識・知恵・科学・人間性を大切にするイスラム教が
預言者ムハンマドとその後継者らに支えられ
約60年間続いたけれども
やがて王政が始まり個人の権力が支配するようになった。

そのまま、民主主義が損なわれた状態、
そして神の教えが正しく行われない状況が、
長く、実に今日まで続きました。

植民地時代が終わった、民主化の機会でさえ
軍事クーデターで独裁政権が起こり、
人々が抑圧され続けてきました。

それが、
抑圧の中で生きるすべを失った青年の
焼身自殺をきっかけに爆発したのが
今回の中東の諸々の革命運動である。。。

という、とっても歴史的スケールの大きなお話でした。

【メモ】
講演タイトルがTwitterと名乗っていたのですが
そんなのは一言も出てこず、でした。
たしかに、この長く大きな歴史にはたしかに
Twitterの意義なんてなんてちっぽけなのだろうと思えますが、、

ただTwitterなどが民主的インフラとして
少なからずとも歴史的流れの中の需要を満たすことに貢献した、
というのはきっとあるのだと思います。

少なくとも、メディアなどでは、
言われています。。

【内容詳細】
では、講演の内容を掲載いたします。
速記ですので一部間違い等ある可能性もありますし
すべて記録しているわけでもありません。

ご了承ください。
また、記録は通訳の方の日本語をもとに行っています。

(挨拶 略)

アラブ世界は親日的です。
他のどの国に対してよりも日本に対して好感を抱きます。

その理由は三つ有ります。
日本人は宗教人種にかかわらず人間を大事にする。

二番目の理由は、
イスラム世界と日本の出会いが非常に良いものであるということ。
日本が非常に発展しレベルの高いことであること。

三番目は、
日本人が仕事を厭わず、仕事を軽蔑せず一生懸命に働き、
規則を守り社会の発展に貢献するということ。

これらがアラブ世界が日本人を尊敬する理由です。

最初に本題に入る前にイスラムについて説明します

イスラムという宗教は世界に広まる宗教として
私たちのところにやって来ました。

最後に神様がメッセージを与えたもので
メッセージを与えられたのはムハンマドでした
ムハンマドはそれから23年のうちに国家を作りました。

この国家は知識、知恵、科学など
そういうものに立ってすすめるというものです。
これをら基礎にして人々は発展できるのだと私は思います。

それでどうなったかというと

イスラムはアラビア半島で始まりましたが
当時部族に分かれ争っていたのが、統一された国家になりました。
人々の諸権利をきちんと認め合う、人間性を認める国家になりました
そのような人間性を認める国家が、最初に樹立されたのでした。

この23年という短い期間に
預言者は神が望む形で共同体、国家を作り上げた。
その姿を見れば完璧な形で国家を樹立しました

そのあと、40年間にわたり受け継がれ
神が野望む形を実現し続けました。

このように理想的な形で23年と40年続きましたが
歴史は、そのまま歩みませんでした。

神が定めた道を着実に適用することができなくなり
イスラムが現実の中で、神の教えたまっすぐな道と
違う方向に進み始めた。

シューラ(評議会)など、
みんなで浚儀して討論し決めようといったことや、
隣人愛、兄弟愛が、だんだん消えていった。

王政が樹立されるようになり、個人的権力に統治され
民主主義の原則が損なわれた状態がずっと続くようになった。

これはイスラムの教えに背くことです。

政治的面において、神のメッセージが
正しく適用されない時代がずっと続いた。

神の教えを忘れた結果
徐々に道をはずれてしまいました。

ムハンマドが最初に伝えたメッセージは
イスラム教としての統一国家です。

人は、大地は神のもので
人は同胞で、大地は共有物であると。

他を抑圧する方向に向かったことで、
イスラムは発展が遅れる世界になった。

党派や分裂あらそい、互の武装闘争
革命が次々起きる国家になった

一個人や一グループが権力を得て、
神の教えが正しく行われない、遅れた国家になった。

このようにイスラム世界が分裂した状況にある中で、
非イスラム教、例えばユダヤ人やキリスト教の人たちが
この機会に自分たちの策法を成就させようとした。

ヨーロッパやシオニズムが
カリフ(預言者の代理人。後継者としての最高責任者)
が一人であること(統一されている状態)を崩壊させるため
オスマントルコを分割させ、バラバラの国、弱い国々にした。
それが サイクス・ピコ協定(1916年) 協定であります

長くなりましたが

そのような弱い状況にあっても
イスラムの教えに熱心な指導者も出てきて
モンゴルやタガールがイスラム世界に来たときは、
それを防ぐことが出来た。

神の教えが正しく適用されない時も
イスラームの勢力をひとつにまとめ、
外からの侵略に力を一つにし勝利をおさめることが出来た。

十字軍に対しても
正しい教えに基づいて一つにまとまったから
勝利をおさめることが出来た。

パレスチナの開放などもその例に挙げることが出来る。

ヨーロッパがイスラム諸国を植民地化したが
最後には追い出すことが出来た。
それは神の正しい教に基づいて立ち向かったからである
と言うことが出来ると思います。

植民地主義について言えば――

植民地を別な言葉で言えば
その国をめちゃくちゃに破壊するということです。

日本人が、
祖国という神聖な領土を植民地主義から守ることを実現したのは
素晴らしいことだと思います。

ただ欧米が日本に対して行なった人道的罪は
広島長崎への原爆投下ですが
これは例を見ない非人間的行為であると思います。

以上のとおり、
最初に皆さんに知識として紹介しましたが、

植民地主義を追い出した後、
民主主義という選択肢がありました。

自由、民主主義、公正さを尊重する機会があった。

しかし、軍事クーデターが起こり
中東の現在の多くの国が独裁体制です。

軍事政権から独裁政権の方向を歩み
人間の尊厳や、人権を無視した政権が樹立されました。

これは神の教えに則ったものではない。

このような軍事政権が樹立されたとき、
シオニズムやヨーロッパの国々が
このような軍事政権を通して策法を仕掛け、
人々を圧するようなことになった。

こうして、社会の中で神の教えが行われなくなり
ニュースで皆さん見るTwitter革命な
革命が起きるような世界になってしまった。

軍事政権は一党独裁で
これに逆らうことが殆どできないような力の支配が行われた。

議会などの諮問機関があると聞いているかもしれませんが
自由な選挙で選ばれた代表が議会を作っているわけではない。

人民共和国などの名前はついているが、
実態は王政と変わらず、
子供から子供へ権力が引き継がれ、
時には党の内部で権力が引き継がれる。

独裁体制であって、議会が存在しても民主主義ではない。

このような時代が続き民衆が我慢できなくなったのが
現在起きている革命の原因であります。

それでどうなったかというと
2011年2月半ばチュニジアで革命が起きた。

独裁的軍事政権の体制の下で、
結局その国は、国民の利益を阻害する形でしか運営されず、
自由もなく、人々に害はあっても益はない形になり、
チュニジアで最初の革命が起きた。

そしてエジプト、シリアなどにも行っているわけですが、
これと同じような状況あこれからも続くでしょう。

イスラムの教えが正しく適用されない国でありますから
ずっと続いていきます。

ちょっと長くなりましたが
チュニジア革命についての説明を行いました。

チュニジア革命は単純なことから始まりました。

青年が荷車で野菜を売っていました。
家族を養うためにやっていました。
儲けなんて家計を助けられるほどもないぐらいだったけれども。

ところが警察がやってきてダメだと言って
それが出来なければもう家族を助けられない。

その結果どうなったかというと
広場で青年が自分に火をつけ焼身自殺してしまいました。

これが何故起こったかというと
長い圧政によるもので、
民主主義を否定し、
失業問題を解決できなかったことが原因です。

これに端を発して独裁政権打倒が起こりました。

国民の権利のための革命。
自分達の福祉をもっと充実させようという革命でした。

結果、大統領は国外へ去らなければいけなくなった。

革命が起こったとき、
チュニジア政権は何をしようとしたかというと
無抵抗な民衆に対して武力を行使した。

しかしながらこのような状況で、
チュニジア軍は知恵ある行動をしてくれて、
現政権に対して距離を置く形をとった。

その結果、大統領は抑えることができなくなり
サウジアラビアに亡命した。

あとで金やドルがたくさん見つかったが
大統領は最後までそれを持ち出そうとしていた。

その計画は失敗したが、
これは国民のものであるから当然である。

まだ海外に隠し財産があり、
それを手続きをとって取り戻すとうことが行われ
ほとんど成功しました。

国民の財産を奪った隠し財産を取り戻すことに成功しました、

さて、それで、チュニジアの革命はひとつの指標を出した
中東で次々起こる革命の指標となりました。

エジプトでも。
エジプトはチュニジアより遙かに人が多いので
一つのデモでも何万人もの人が
ムバラク政権打倒に動き始めました。

力でムバラク政権を倒そうとしましたが
最初から打倒しようとしたのではありませんでした。

まず改革の要求を行いました。

しかしそれを現政権が受け入れることが出来なかったため、
人々の怒りが爆発するようになっていきました。

政権側はデモの中にラクダや車で突っ込むなど
残酷な方法で人々をけちらそうとしたのですが、

エジプト軍は中立な立場を取り
大統領は辞任することになった。

今憲法と選挙を行う準備をしています。
自由を求める人々が自由を得る機会が出来たというのことは
革命が成功したと言えると思います。

現在ムバラクとその周りで国民の財産を奪った者たちは
現在裁判にかけれています。

ムバラクの子供は2000億ドルの海外資産を
隠し持っていることが報道されていますが、
軍の管轄において裁判が行われており
今後実態が明らかになるでしょう。

話はイエメンの方に移りますと、

イエメンでも2月11日に大きな動きが起こっています
デモ隊が、
正しさや民主主義、
自分たちに力で応えるのではなく、人間として接して欲しいと
要求しましたが、

政権は戦車や飛行機で殲滅しようと、
殺したり傷つけて蹴散らそうとしました。

しかしだんだん抑えが効かなくなり、
最後には大統領官邸に大砲が打ち込まれ、
大統領は火傷ですが重症を負いました。

現在サウジで治療をうけています。

リビア情勢について言いますと

リビアは革命で政権が出来たのですが、
カダフィ政権は42年の長きに渡っています。

共和国ですが、独裁体制です。
一番古い、長期政権になっています

自分の政権を子どもに継がせようとしており
彼は国の多くの富を手に入れ、
人工は300万人ぐらいしかないが
自分でたくさんとって
家族で1000億ドルの資産を持っていると言われています。

海外のアフリカの兵隊などを1000ドルで雇ってデモを攻撃している

カダフィは自分の国が破壊されることを厭わない。
ローマが自分の市を焼き尽くしても何も思わなかったように。

かれはほぼキチガイです。
自分に反対するものは何でも破壊しようとします。

彼は麻薬もやっていて精神状態が非常におかしい。
このような政権はやがて崩壊する。
今決着をしようとしている。

暫定委員会ができていて
ヨーロッパはこれを支持すると表明しています。
いずれ決着はつくことに変わりはないと思います。

さいご、シリアの情勢について述べますと、
今後同じような革命が起こるといえます。

民衆は最初、
体制、政権の改革を求めてデモを行いましたが、
政権は何をしたかというと、
投獄し、拷問しました。
そして父から子へ政権を移そうと。
国民に対して戦車航空機重火器で応えた。

町や村でデモが起きたとき
村を包囲して一網打尽にするという手法も取ります。

こういうことに対して政府は、
デモが軍の兵士を殺したからそれに対応したんだとか

シリアの新聞は、国民が暴力的になって
政府がそれを抑えたんだと書いていますが
ほとんどそれは嘘です。

イスラム法学者の仕事は
暴力ではなくきちんと国民に応えなければならない
という助言をしていまして、私も助言をしました。

ところが政権は未だこのようなことをしていまして、
これからどうなるか分からないが
有るべき方向へ行くことを私は望みます。

そしてシリアの人々が互いに協力し
前進することを私は望んでいます。

一部のセクトだけが権力を得るのではなく、
皆が協力する形になることを望みます。

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【質問】
これからのエジプトについて。
ムスリム同胞団が勢力を伸ばしていますが
トルコのように世俗化するか
サウジのようなイスラムに則った政治体制になるか
それともまた新しいものになるのか、お聞きしたいと思います

 エジプトや他の国の革命はヨーロッパの支援するところが大きい
 自分たちでやったことではないので正しくないと言えるかもしれない
 しかし起きたということがハイジなことである
 そして今後このようなことが続いていくと考えられる
 ほぼ半数の国ではこれからもの雇用な動きは続いていくと思います

【質問】
シリアでの青年の少年の自殺は
何を象徴するのでしょうか

 焼身自殺という行為に対して
 イスラムの立場では認められない。
 どんな抑圧を受けたとしても認められない。
 しかし、
 彼はどうしようも無い状況に陥らされて
 彼の思考が、誰からも助言を得られず
 選択肢がないと思った、
 自分自身を失ったと考えられます。
 自分自身を失うことはありうることで
 イスラムの解釈では
 自分の考えを行使できる状況であれば
 自殺はいけないことであるが
 自分を失った状況で行った行為ですから
 罪は関係ないということになります。

【質問】
今回講演のお話と少し違いますが
日本は大津波などで危機に瀕しています。
困難に対しどうすればいいのか
イスラムの知見から何かアドバイスはありますか

 災害や原発問題が起きているが
 イスラムの立場、
 人間の立場からすると、
 あらゆる人が平和であることをのぞみ
 皆が協力することを望むわけですが、
 日本の多くの若者が立ち上がっていて
 これはいいことであると思っています。
 そして、他人の苦痛を和らげるために
 助けてあげたりすることが
 イスラムではいいことであります。
 これは異教徒でも国が違っても
 神が作った同胞ですから
 望まぬ突然お災害にあったときは
 協力し助けあうということ、
 日本の若者がそれに立ち上がっていることは
 いいことであると思います。

 ムハンマドの言葉を伝えますと
 この地上にある人に慈悲を与えれば
 天からその人に
 同じような慈悲を与えられると
 述べてまして、
 まさにそれは正しいことであると思います。

【質問】
アメリカのダブルスタンダードについて法学者として
どのように考えているか
オバマはエジプトの民主化を支持したが
シリアには支援をしていません。

 今の意見ですが
 アメリカは、人々の革命は原則的に支持しません。
 自分たちの利益を考えます。
 リビアの介入はNATOが介入しましたが
 これはカダフィの人格に依存しています。
 国連が介入を決定しましたが
 それは人権を守るためです。

 シリアは、
 中国などが拒否権を行使しましたが、
 このような状況が続けば
 人権を守るための介入はありうると考えます。

【質問】
形を変えて敵をつくっている
共産主義、そしてアメリカ。
そこにあるのは独裁である。
矛盾と犠牲がはびこり
哲学的アイデンティティが確立していないことで
いつまでも争いがやまないのではないか

 アメリカはおっしゃるとおり
 ビンラディンと利害が一致しアフガンを支援し戦った。

 そのあとビンラディンが9.11で破壊した
 利害が一致しなくなった。

 ブッシュはテロとの戦争を始めました。
 多くの人が誤解していますが
 イスラムとの戦いではなく
 テロリズムとの戦いであることを
 認識しなければいけない。

 多くの革命が起こり
 これから公平な国家を樹立する動きがあるが
 それがうまく出来なければ
 また同じようなことが起こると思います。

【質問】
先生が冒頭に、植民地主義から軍事政権独裁化の話をなさり
それは神の教えが正しく実行されていないからと言われましたが
それが長期にわたり今の圧政に至るということですが
そのなかで法学者の先生方は何かできなかったのか
出来なかったならそれは何故でしょうか。

 今指摘された、
 学者は軍事独裁政権下で
 何をしていたかということですが、

 私は、最初の軍事独裁政権で犠牲になったのは
 イスラム学者であることを申し上げたい。

 イスラム学者は処刑、投獄された。
 そして学者だろうが市民だろうが
 反対するものは投獄された。

 いわゆる国家による、
 テロと同じ状況が続いていた

 学者が何をしていたかというと、
 しゃべってはいた。

 実現しなければ何もしていなかったわけではない。
 その結果として、今回のような革命に至った。

【質問】
先ほどイスラムでは自殺は戒められているというお話がありました。
仏教では殺生戒があります。イスラムでは他人を殺すことを禁止する戒はありますか?

 今の質問は難しいのですが
 人を殺すことはどのような宗教の
 罪なき人を殺せば処罰すると書かれています
 コーランは殺人を犯したものは殺されると書かれています。
 自殺は、現世において処罰は不可能でありますから
 来世において責任を負わされる。

 繰り返しになりますが
 殺人者が何故殺されなければならないかというと
 誰かを殺したものがそのまま残ることは
 コーランでは許されない
 一般論でもそうしたことは許されない。

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